デビュー作「忍風戦隊ハリケンジャー」以来の激しいアクションシーンや、全裸シーンに挑戦した塩谷瞬。そんな過酷な現場を乗り切れたのは、10年あまりの間に様々な作品に出演し、培ってきた俳優経験のおかげだという。「共演者たちにアドバイスする上で監督、演出家、殺陣師の方々に教わったことが凄く役立ち、自分もこの10年で成長しているんだと感じた」塩谷にとって本作は、現時点での俳優人生の集大成となった作品でもあるのだ。
「半沢直樹」でのオネエ言葉の大蔵官僚・黒崎検査官役で、ブレイクした片岡愛之助。「半沢〜」の収録に先立ち、本作の撮影がされ、30年ぶりの現代劇出演となった。はじめての極道役、拳銃発砲シーンを体験した愛之助は、「やっぱ、現代劇って面白いですね!」と終始ハイテンション。「半沢〜」でのあの振り切れた演技も、本作を経て生まれたものではないだろうか。さらに黒崎役を演じる上でその仕草を参考としたという、弟子の片岡愛一郎も、剣のクラスメイトでゲイボーイの麦ホップとして出演している。
本作のラストには、原作にはない、脚本家・那須真知子オリジナルの思わぬどんでん返しと予想外の感動が待ち受けている。これまでの物語をすべて覆すように思われる展開だが、そのための伏線は劇中に巧妙にちりばめられている。来夢の出す二つの謎々や、大霧の服役と三島が眠り続けていた"9年"という符号など、ラストを知った上で、もう一度、見直してみると、まったく別の物語が見えてくるはずだ。本作は二度観て、なお面白い作品なのだ。